明暗 2005 2 12
以下の「価格」という文章が、
「ソニーの苦悩と松下の復活」を暗示していると思ったでしょうか。
そういう人は、勘がいいと思います。
実は、この文章は、
量販店において、価格競争に巻き込まれてしまったソニーと、
地域の「松下のお店」で、地道な商売を展開した松下のことをイメージしながら、
一般論に置き換えて、「価格」という文章を書いたのです。
価格 price 2005 2 14
これは、私が青年の頃の話です。
学校の天文台で、天体観測をしているうちに、
やはり、自分の望遠鏡がほしくなったのです。
そこで、天文ファンに相談してみると、
「よい望遠鏡がある」と言われました。
「それは、どこで買えるのですか」と聞くと、
「工場へ行きなさい」と言われました。
カタログもなかったので、実物を見るために、
工場がある東京へ向けて、わざわざ上京しました。
これは、あの当時では珍しい「直販」という流通形式でした。
つまり、消費者が、工場から直接買うという方式です。
今では、パソコンが直販されていますので、
こういう販売方法は珍しくありませんが、
あの当時では、非常に珍しい販売方法だったのです。
工場の販売員に、こう聞きました。
「どうして、小売店で、望遠鏡を売らないのですか。
私のように、田舎に住む人にとっては、買いに来るのも大変です。」
その販売員は、こう答えました。
「天文ファンに、安く望遠鏡を提供したいからです。
問屋や小売店を通すと、そういう人たちの利益が上乗せされますので、
販売価格が高くなってしまうのです。
同じような理由で、カタログも作っていないのです。
カタログを作って、全国の天文ファンや学校に配布すれば、
そのカタログ制作費を、望遠鏡の販売価格に上乗せする必要が出てしまうのです。」
今は、時代の過渡期だと思います。
昔は、流通網が発達していませんでしたので、
「メーカー→問屋→小売店」という流通形式でした。
この方式ですと、消費者が、わざわざ工場に買いに行く手間が省けますが、
反面、問屋や小売店の利益が、販売価格に上乗せされますので、
その分、販売価格が高くなってしまいます。
現在、宅配便などの流通網が発達しましたので、
消費者が、直接、工場から買うことができるようになりました。
「安く買えるならば、全部、直販形式にした方がよい」と言う人がいるでしょうが、
そうなると、現在ある問屋や小売店が倒産してしまいます。
宅配便などの流通形式は、「流通革命」と言えますが、
人間は、急には変われないのです。
問屋や小売店で食べている人たちのことを考慮すべきです。
いずれ、デパートや小売店は、ショールームとなってしまうかもしれません。
実物を、デパートや小売店で確かめて、発注は工場(直販メーカー)にするという形式です。
今のパソコンは、そういう状態に近くなっています。
そういうわけで、いつかは産業構造の転換を図る必要がありますが、
しかし、「人間は、急には変われない」ということです。
徐々に、転換していくしかないと思います。
さて、小売店は、どうすべきか。
「丁寧な商品説明」と「きめ細かいアフターサービス」を武器として、
生き残りを図るべきです。
そういうサービスがあれば、消費者は、たとえ高くても買います。
今までの小売店は、
「売りっぱなしで、後は面倒を見ない」というケースが多かったと思います。
「販売価格 = 生産価格 + 顧客満足度」
顧客満足度が低ければ、販売価格は、限りなく生産価格に近づいていきます。
商売とは、顧客満足度を高めることです。
そうすれば、自然と利益はついてくるものです。